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40代後半から50代にかけて、なんとなく元気が出ない、性欲が落ちた、筋トレしても前ほど筋肉がつかない。そう感じたことがある人は多いはずだ。そこで「テストステロンが低いんじゃないか」「補充すれば若い頃に戻れるのでは」という話にたどり着く。
実際、2026年6月、アメリカの保健福祉省(HHS)がテストステロン補充療法(TRT)の表示ルールを見直すと発表した。加齢による低テストステロンへの使用制限を緩和する方向の変更だ。背景には、心血管リスクを検証したTRAVERSE試験など、最近の臨床データの見直しがある。
「アメリカで規制緩和」と聞くと、つい「じゃあ自分も」と思いがちだが、話はそう単純ではない。今回はTRTのメリットとリスクを、誇張せずに整理しておきたい。
TRT(テストステロン補充療法)とは
TRTは、不足している男性ホルモン(テストステロン)を外部から補う治療法だ。注射、ジェル、内服薬など複数の方法がある。日本では主に加齢性腺機能低下症(LOH症候群)の診断を受けた人が、保険診療または自費診療で受けられる。
「歳のせいだから仕方ない」と諦める前に検討する選択肢、というのが本来の位置づけだ。アンチエイジング目的での安易な使用については、専門家の間でも慎重な意見が根強い。
まずは検査:自分の数値を知らないまま補充の話はできない
「元気が出ないのはテストステロンのせいかも」と思っても、実際に低いかどうかは血液検査をしなければ分からない。窓口は泌尿器科や男性更年期外来(メンズヘルス外来)だ。テストステロン値は午前中に高く出る傾向があるとされ、午前の採血を指定されることが多い。
判断の目安も公表されている。日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会の「LOH症候群診療の手引き」(2022年改訂)では、総テストステロン250ng/dL未満、または遊離テストステロン7.5pg/mL未満が治療介入を検討する目安とされている(執筆時点の情報。自分の検査結果の解釈は必ず医師に確認してほしい)。ちなみに海外には300〜320ng/dL前後を基準とする考え方もあり、境界域の判断は施設や医師によって分かれる。
FP的に言えば、これは資産運用でいう「現状把握」だ。バランスシートも見ずに金融商品を買う人はいないのに、身体のこととなると、数値を測る前にサプリや自費メニューから入ってしまう人は多い。まず検査。話はそれからだ。
メリット:性欲・筋肉・気分への影響
TRTで報告されている主な効果は以下の通り。
- 性欲・勃起機能の改善
- 筋肉量の増加、体脂肪の減少
- 疲労感の軽減、気分の改善
- 骨密度の維持
ここで一つ整理しておきたいのが、性欲・勃起機能の話だ。同じ「夜の悩み」でも、原因が血流なのかホルモンなのかで、効くアプローチが違う。タダラフィル5mgデイリー服用3ヶ月の実録で書いた通り、タダラフィルは血流を改善して勃起をサポートする薬で、ホルモンバランス自体には作用しない。一方TRTは、性欲の土台そのものに働きかける。タダラフィルは実際に試した経験があるが、TRTは未経験。だからこそ感じるのは、「どっちが効くか」ではなく「自分の悩みがどっちのタイプか」を見極める方が先決だということだ。
リスク:多血症・血圧・前立腺、そして薄毛
メリットだけ見て飛びつくのは危険だ。リスク側も同じ熱量で知っておくべきだろう。
- 多血症(赤血球増加):血液が濃くなり、血栓リスクが上がる。TRTで最も注意される副作用の一つ
- 血圧上昇:継続的なモニタリングが必要とされている
- 前立腺への影響:以前は前立腺がんリスクとの関連が強く警告されていたが、近年の臨床データでは「以前考えられていたほど危険ではない」という方向に評価が変わりつつある。今回の規制緩和もこの流れの一環だ
- 精子形成の抑制:外部からテストステロンを補うと、体が「もう十分」と判断し、自前のホルモン産生・精子形成が休止する。将来子供を望む人は要注意
- 薄毛(AGA)の進行リスク:これは見落とされがちだが重要なポイントだ。テストステロンは体内でDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることがあり、このDHTがAGA(男性型脱毛症)の主な原因物質とされている。つまりTRTによって、遺伝的に薄毛素因がある人は進行が早まる可能性がある。すでに薄毛が気になっている、あるいは家系的にリスクがある人は、AGA新薬ET-02の最新動向も合わせて知っておいた方がいい。
このうち血圧は、唯一自宅で毎日測れる項目だ。TRTを受けるかどうかに関わらず、50代の身体投資はまず自分のベースラインの数値を知ることから始まる。家庭用の上腕式血圧計は数千円からあり、健康管理の「固定資産」としては安い部類だろう。
日本とアメリカの温度差
今回のHHSの発表はあくまでアメリカの制度の話だ。日本では薬事承認・保険適用の枠組みが異なり、同じスピード感で規制が動くわけではない。「アメリカで解禁ムード」という見出しだけを見て、海外の未承認薬や個人輸入に手を出すようなことは勧められない。検討するなら、まず国内の専門医(泌尿器科・男性更年期外来など)に相談するのが筋だろう。
FPとしてひとこと
健康への投資は、お金の使い方の中でもリターンが見えにくい分野だ。だからこそ、メリットの宣伝文句だけで判断せず、リスクも込みで「自分にとって割に合うか」を考える視点が要る。これは資産運用の判断とよく似ている。
性欲や筋肉の悩みに対して、タダラフィルなのかTRTなのか、あるいは生活習慣の見直しなのか。選択肢を整理した上で、専門医と相談しながら決めるのが結局いちばん近道だ。
TRTのよくある質問
Q. TRTはどこで受けられる?
A. 泌尿器科や男性更年期外来(メンズヘルス外来)が窓口になる。血液検査でテストステロン値を測り、LOH症候群に該当するかの診断が出発点だ。保険診療になるか自費になるかは診断内容や医療機関によって異なるため、受診時に確認してほしい。
Q. テストステロンの基準値は?
A. 国内の診療の手引き(2022年改訂)では、総テストステロン250ng/dL未満、または遊離テストステロン7.5pg/mL未満が治療介入を検討する目安とされている。執筆時点の情報のため、最新の基準と結果の解釈は医療機関で確認を。
Q. 薬に頼らずにテストステロンを上げる方法はある?
A. 睡眠・筋力トレーニング・体脂肪の管理などとの関連が報告されている。ただし個人差が大きく、明らかな不調が続いているなら自己流で粘るより検査が先だ。睡眠の質に不安があるなら睡眠時無呼吸の検査と実録も参考にしてほしい。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療を推奨するものではありません。テストステロン補充療法の適応・実施については、必ず医療機関にご相談ください。
この記事を書いた人
Tk@身体資産FP|メンテ中の独立系FP
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
50代の独立系FP。身体メンテナンスを「浪費」ではなく「将来コストを防ぐ投資」として実録中。医療脱毛・美容ガジェット・スキンケアを費用対効果で評価し続けています。
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