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この記事は、右肩SLAP損傷の手術(2泊3日入院・全治6ヶ月)と、その後の関節鏡下肩関節授動術(2泊3日入院)という2回の手術を経験した50代の独立系FPが、実際にかかった費用と戻ってきたお金を、高額療養費制度・民間保険の給付金・医療費控除まで含めて損益計算した実録です。
授動術の実録で「費用の損益計算は別記事でまとめる」と予告した。これがその記事である。
身体の修繕については散々書いてきたが、考えてみればFPは本来こっちが本業だ。肩の手術2回分の請求書と給付金を、決算書として開示する。
この記事でわかること
- 肩の手術2回(いずれも2泊3日入院)で実際に窓口で払った金額
- 高額療養費制度で自己負担がどこまで圧縮されたか
- 民間医療保険の入院給付金・手術給付金でいくら戻り、最終収支はどうなったか
結論:2回の手術の最終収支
先に決算を出す。
| 項目 | 1回目(SLAP損傷) | 2回目(授動術) |
|---|---|---|
| 窓口で払った額(自己負担) | 約100,000円 | 106,085円 |
| 民間保険からの給付金 | 265,000円 | 265,000円 |
| 差し引き | +約165,000円 | +158,915円 |
窓口額は、高額療養費適用後の保険診療分に加えて、食事代と差額ベッド代(個室)まで含めた「病院に実際に払った全額」である(1回目は概算)。
数字だけ見れば、2回合計で約32万円の黒字だった。だが、この結果は偶然ではなく、公的制度と民間保険の役割分担を理解して設計していた——正確に言えば、一度の失敗を踏まえて設計し直していた——結果である。以下、仕組みを分解する。
第一の防衛線:高額療養費制度が自己負担の天井を決める
まず大前提。日本の公的医療保険には高額療養費制度があり、1ヶ月(暦月)の医療費の自己負担には所得区分ごとの上限が設けられている。手術と聞くと「数百万円かかったらどうしよう」と不安になるが、保険診療の範囲であれば、自己負担の天井は最初から決まっている。
私の所得区分は区分ウ。この場合の月上限は「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」となる(※上限額の計算式・区分は執筆時点の制度に基づく。最新の金額は加入する公的医療保険の窓口で確認してほしい)。
実務上のポイントは2つある。
- マイナ保険証(または限度額適用認定証)を使えば、窓口payが最初から上限額で済む。後から払い戻しを待つ必要がない。私はマイナ保険証で対応した
- 上限は「暦月単位」。月をまたぐ入院は上限計算が2ヶ月に分かれて不利になることがある。私の場合は1回目(11月)も2回目(7/8〜7/10)も同一月内に収まった
第二の防衛線:民間医療保険は「制度の外側」を埋める
高額療養費で天井が決まるなら、民間の医療保険は不要なのか。FPとしてよく聞かれる問いだが、私の答えは「役割が違う」だ。高額療養費がカバーしない領域——差額ベッド代・食事代・通院・装具・そして働けない期間の収入減——を埋めるのが民間保険の仕事である。
私が加入しているのは、入院一時金20万円・手術給付金・入院日額5,000円を組み合わせたタイプの医療保険だ。実はこの契約、最初からこの形だったわけではない。以前、腰椎椎間板ヘルニアで5日間入院したときの契約は日額中心で、給付は合計175,000円(入院一時金5万円+手術給付金10万円+日額5,000円×5日)だった。その経験から「入院は短くなる一方だ」と痛感し、一時金中心の契約に掛け替えている。
今回の2回で受け取った(申請した)のは以下だ。
- 1回目:入院一時金200,000円+手術給付金50,000円+入院給付金15,000円(5,000円×3日)=計265,000円
- 2回目:入院一時金200,000円+手術給付金50,000円+入院給付金15,000円(5,000円×3日)=計265,000円
ここで50代に伝えたい実務ポイントがある。2泊3日の短期入院では、日額型の入院給付金はほとんど積み上がらない。今回のような短期決戦型の手術で効くのは、日数に関係なく出る手術給付金や入院一時金の方だ。医療の進歩で入院は年々短くなっている。昔ながらの「日額×長期入院」を前提にした保障設計のままだと、実際の入院とズレていく。
私自身の数字がその証拠だ。旧契約ではヘルニアの5日入院で175,000円。掛け替え後は、それより短い2泊3日で265,000円。給付の9割超(一時金20万円+手術給付金5万円)が入院日数と無関係に出ており、日額分はわずか15,000円である。入院一時金の差(5万円→20万円)だけで1回あたり15万円、2回で30万円。今回の黒字は、ほぼこの掛け替えで生まれたと言っていい。
忘れがちな第三の論点:医療費控除と給付金の関係
確定申告の医療費控除を考える人も多いはずだ。ここで重要なのは、医療費控除の計算では、支払った医療費から保険給付金を差し引くというルールである。給付金が実費を上回った場合、その手術に関する医療費控除の対象額はゼロになる(他の医療費から引く必要はなく、給付対象となった医療費の範囲内で差し引く)。
私のケースでは、2回とも給付金が窓口負担を上回ったため、この手術に関する医療費控除の対象額はゼロになった。医療費控除の考え方は身体投資の医療費控除記事でも整理している。
名医紹介も「0円の給付」だった
金銭の給付ではないが、収支表に載せるべきものがもう一つある。保険に付帯していた名医紹介サービス「T-PEC」だ。1回目の手術の際、追加費用0円で専門医につながる安心を買えた。詳細はこちらに書いたが、保険は給付金だけでなく「おまけ」まで使い倒してこそ元が取れる。
FP的総括:50代が肩の手術から学ぶべきお金の教訓
- 保険診療の手術は、恐れるほど高くない。高額療養費制度が天井を決めてくれる。まず自分の所得区分と月上限を把握しておくこと
- マイナ保険証(限度額適用)で「立て替え」すら不要になる。入院が決まったら最初にやる手続きだ
- 民間保険は「短期入院時代」に合っているか点検を。日額型偏重なら、手術給付金・一時金型とのバランスを見直す価値がある
- 給付金を受け取ったら医療費控除の計算を忘れない。もらいっぱなしで申告すると誤りになる
身体の修繕費は、制度と保険の設計次第で「想定内のコスト」に変えられる。肩を2回切った男の決算書が、あなたの保障設計を見直すきっかけになれば幸いである。
よくある質問
Q. 手術・入院にいくら用意しておけばいい?
一般論としては、自分の高額療養費の月上限+制度外の実費(差額ベッド・食事・雑費)を賄える流動性があれば、保険診療の入院で家計が壊れることは考えにくい。具体額は所得区分によるので、まず自分の区分を確認してほしい。
Q. 民間医療保険は不要では?
「高額療養費があるから不要」論には一理あるが、私は2回の入院で計53万円の給付を受けた実感として、制度の外側(短期入院の固定費・収入減・付帯サービス)を埋める設計なら意味があると考える。要否は貯蓄額とリスク許容度次第であり、全員への正解はない。
Q. 保険の見直しはどこに相談すればいい?
利害関係のない相談先を選ぶこと。私自身が独立系FPなので手前味噌にはなるが、特定の保険会社に属さない相談先は選択肢の比較がフラットになりやすい。
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※本記事は個人の体験と執筆時点の制度に基づくものです。高額療養費の上限額・給付内容は所得区分や加入する保険により異なります。最新の制度・税務の詳細は公的窓口・税理士等にご確認ください。
この記事を書いた人
Tk@身体資産FP|メンテ中の独立系FP
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
50代の独立系FP。身体メンテナンスを「浪費」ではなく「将来コストを防ぐ投資」として実録中。医療脱毛・美容ガジェット・スキンケアを費用対効果で評価し続けています。
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