50代のシステム復旧論。CPAPという名のサブスクで、レクター博士の夜を越える

睡眠不足という名の、静かなる倒産リスク
投資の世界では、負債が膨らみすぎれば最終的には倒産という結末を迎えますが、身体という資産においても全く同じことが言えます。その最たるものが、日々積み重なる睡眠負債です。特に50代になると、若い頃のような無理な運用は通用しなくなり、睡眠の質の低下がそのまま翌日のパフォーマンス、つまり自分自身の稼働率の低下に直結します。私自身、日中の猛烈な眠気や集中力の欠如に悩まされ、これは単なる疲れではなく、身体システムそのものに致命的なエラーが起きているのではないかと感じた時期がありました。
原因を調べて行き着いたのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS:サス)という、自分では気づくことができない恐怖の症状でした。寝ている間に呼吸が止まり、脳が慢性的な酸欠状態に陥る。これは資産運用でいえば、夜の間に気づかぬところで強制ロスカットを繰り返しているようなものです。この負債を放置したままでは、どんなに日中努力して利益を上げようとしても、身体資産は目減りしていく一方なのです。
月額5,000円で買い叩く、身体の正常稼働
この致命的なシステムバグを修正するために私が導入したのが、CPAPという医療機器です。この運用は、健康保険制度を活用した公認のサブスクリプションと言い換えることができます。医師による正確な診断と治療指示が必要になりますが、これが認められると、毎月の機材レンタル代と定期的な診察代を合わせて、自己負担3割であれば月額5,000円程度で継続できる仕組みになっています。
毎月5,000円を投じることで、日中の圧倒的なパフォーマンスという莫大なリターンを確実に手に入れる。奈良や橿原のクリニックでもこの治療は一般的ですが、私はこれを単なる医療費ではなく、身体というマシンの稼働率を最大化するための極めて利回りの良い設備投資だと考えています。自力でなんとかしようとする非効率な根性論を捨て、テクノロジーと公的制度の力を借りてシステムを強制的に復旧させる。これこそが、50代からのスマートな防衛戦略ではないでしょうか。
ハンニバル・レクターのような異形と向き合う覚悟
しかし、この投資には特有の心理的コストが存在します。それは、あの鼻を覆うマスク姿のビジュアルです。鏡に映るその姿は、まるで映画のハンニバル・レクター博士。あるいは戦闘機のパイロットか。家族であれば、見慣れてしまえば笑い話で済みますが、これが会社の旅行となると話は別です。旅館の大部屋で、同僚や部下の前であの異形の姿を晒すのは、さすがに抵抗があります。知的で冷静なFPという看板を下ろし、夜だけ怪物に変貌するようなあの恥ずかしさは、かなりのコストと言わざるを得ません。
正直、大部屋での宿泊はもう無理だと悟りました。このビジュアルを隠し通すためには、一人部屋を確保するという追加投資も必要になります。いびきを封じ込めて家族の安眠という人的資本を守る対価として、自分自身のプライドを一時的に差し出す。この心理的な摩擦も、CPAP運用におけるリアルな維持費だと感じています。
人的資本の最大化は、夜の静寂から始まる
現在、私はCPAPによる物理的なケアに加え、スマートウォッチで毎晩の睡眠データを計測しています。深い睡眠の割合や心拍数の変化を可視化することは、投資信託のポートフォリオを定期的にチェックする作業に似ています。データを見て、睡眠の質が下がっていれば、前日の食事や活動量を見直してリバランスを行う。直感に頼らず、データに基づいて自分のコンディションを調整するプロセスは、非常に納得感のある投資活動です。
50代。身体というマシンは、適切なメンテナンスなしでは確実に劣化し、負債を溜め込んでいきます。しかし、ハードウェアとデータ管理というソフトウェアを正しく組み合わせることで、その減価償却を食い止め、再び高いパフォーマンスを発揮させることは十分に可能です。夜の静寂に賢く投資し、最高の目覚めを手に入れる。たとえ一晩だけレクター博士のような姿になったとしても、この身体資産の充実には代えがたい価値がある。そう確信しています。
身体という唯一無二の資産。あなたはこの月額5,000円の投資と、レクター博士のような姿、どちらを選びますか?

