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日本には「正価」が存在しない商品がある。
メルセデス・ベンツ Bクラス(W246)B180に付けるサブコン、RaceChip。日本の総代理店サイトには製品ラインナップが載っているが、価格が一行も書かれていない。実際に買おうとすると、行き着く先はヤフオクだ。
いくらが適正なのか、誰も教えてくれない。
それならドイツの本国サイトから個人輸入したらいくらなのか。実際に買って、関税から為替手数料まで全部拾って計算した。総額は54,307円だった。
そして調べていく過程で、買う前に知っておくべきだったことが1つ出てきた。後半に書く。
個人輸入したもの:RaceChip RS(B180 W246用)
RaceChip RS。対応車種は Mercedes-Benz B-Class (W246) の B 180(122HP/90kW)。カタログ上は +20PS / +50Nm。
RaceChipには3グレードある。本国サイトの価格はこうなっている。
| グレード | 出力 | 本国価格 |
|---|---|---|
| S | +16PS / +40Nm | 179 EUR |
| RS(購入) | +20PS / +50Nm | 279 EUR |
| GTS | +24PS / +60Nm | 499 EUR |
真ん中のRSを選んだ。
総額54,307円の全内訳
注文確認メールに残っていた明細が、そのまま一次資料になる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| RaceChip RS 本体 | EUR 279.00 |
| Warranty RS | EUR 0.00 |
| 送料(FedEx International Economy) | EUR 25.00 |
| クーポン割引(15%) | −EUR 41.85 |
| 合計 | EUR 262.15 |
| VAT(ドイツ付加価値税) | EUR 0.00 |
ここから先が、日本側で乗ってくるコストだ。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| EUR 262.15 をカード会社の基準レートで換算(約184.81円/逆算) | 48,448円 |
| 海外事務処理手数料 3.63% | 1,759円 |
| カード請求額(換算レート191.521・換算日6/30) | 50,207円 |
| 関税・消費税(FedExが立替、後日請求) | 4,100円 |
| 総額 | 54,307円 |
注意してほしいのは、送料と関税が別物だということだ。送料25ユーロは本体と一緒にカードで払っている。関税・消費税の4,100円は、荷物が通関したあとにFedExから別途請求が来る。
カード明細に載るのは50,207円だけだ。ここで満足して計算をやめると、輸入の損得は必ずズレる。
海外サイトのクーポンは、探せばだいたい配っている
海外のショップは、日本の販売店と違って値引きコードを常時どこかで配布している。アフィリエイト提携先、メールマガジン、セール時期、レビューサイト。出どころはバラバラで、公式サイトのトップページには出てこない。
今回はAIに候補を複数洗い出させて、実際に通ったものを適用した。結果は15%オフ、41.85ユーロ。日本円にして約8,015円が引けた計算になる。
コードには有効期限と対象条件がある。見つけたものが全部通るわけではないので、決済画面で入れてみて弾かれたら次を試す、という手順になる。ここを面倒がって定価で買うと、1万円近くを置いてくることになる。
言語の壁と、探す手間。個人輸入のハードルはずっとこの2つだったが、そこは明確に下がった。
なぜ円安なのに、本国の方が安いのか
ドル円が160円台をつけるような相場で、わざわざ外貨で買うのは不利に見える。実際、為替は不利だ。それでも成立したのには理由が2つある。
ひとつは、明細の最終行にある。
VAT(ドイツ付加価値税):EUR 0.00
日本向けの輸出なので、19%の付加価値税が免除されている。EU圏内の客が上乗せで払っている分を、日本から買うと払わずに済む。
もうひとつが、日本の流通マージンだ。日本の総代理店を通した価格がいくらなのかは公表されていないので直接の比較はできない。ただ、輸入車パーツの国内価格が本国比で大きく上振れするのは珍しいことではない。
為替の不利を、この2つが上回った。逆に言えば、この2つが薄い商材なら、円安局面で個人輸入する意味はほとんどない。「海外だから安い」ではなく、「その商材の日本価格に何が乗っているか」で決まる。
明細に「Warranty RS 0.00」とあるが、日本の車には適用されない
ここが、買う前に知っておくべきだったことだ。
注文明細には、こういう行が入っている。
Warranty RS:EUR 0.00
RaceChipのRSにはエンジン保証が付く。本体価格に含まれているので0円で計上される、という意味だ。サブコンで誰もが不安に思うのは「壊れたらどうするのか」だから、これは大きい。
そう思って、公式サイトの保証条件を読みに行った。そこにこう書いてあった。
保証の対象となるのは、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリスに登録された車。走行距離10万km以下。車両年式は3年以内。
日本が入っていない。
そのうえ、W246型のBクラスは2011年から2018年の型だ。どの個体を選んでも車齢3年以内には収まらない。二重に対象外ということになる。
つまり、明細に0円で載っている保証は、私の車では効かない。
これは「騙された」という話ではない。条件は公式サイトに明記されている。読まなかった私の落ち度だ。ただ、注文明細の1行だけを見て「保証が付いてくる」と思い込む人は、たぶん私だけではない。
日本でRaceChipを検討している人は、グレード選びの判断材料からエンジン保証を外して考えたほうがいい。RSとGTSの差は「保証1年か2年か」ではなく、出力と、チューニング段階の数と、車を買い替えたときの再プログラム権の有無になる。
保証を外すと、本国で買う理由は何が残るか
保証という一番大きく見えた理由が消えたので、残りを正直に並べる。
新品であること。ヤフオクに出ているのは中古が中心で、落札価格の幅も大きい。誰がどの車に何年使ったものなのかは、基本的に分からない。
車種とエンジンを選んで買えること。本国サイトはメーカー、モデル、エンジン型式の3段階で絞り込む。B 180(122HP/90kW)を指定して買うので、適合の不安がない。
そして、総額がはっきりしていること。54,307円。この数字が分かっていれば、ヤフオクの出品を見たときに高いか安いか判断できる。
保証は付かない。それでもこの3つがある、というのが結論になる。
FPとして計算した、価格以外のコスト
出力を上げるパーツを付けるということは、金額以外のものも動かす。仕事柄、そこは先に潰しておきたい。
任意保険。改造の申告が必要かどうかは、保険会社と約款によって扱いが違う。出力や構造に関わる変更は告知の対象になり得る。付ける前に、自分の証券と保険会社に確認しておくのがいちばん安い。事故が起きてから確認するのがいちばん高くつく。
メーカー保証。W246は2011年から2018年の型なので、新車保証は多くの個体で切れている。中古で乗っている人にとって、この論点は実質的に小さい。逆に、保証が生きている新しい車に付けるなら天秤はまったく変わる。
車検。RaceChipは純正のハードウェアとソフトウェアを書き換えず、外付けの制御装置として動く仕組みになっている。取り外して純正状態に戻すこともできる。ただし保安基準への適合を保証するものではないし、扱いは車種と製品によって変わる。
これらは「だから危ない」という話ではない。54,307円という金額の裏で、何を引き受けたのかを自分で把握しておくべきだ、という話だ。
装着して、どうだったか
デフォルト設定のまま走っている。
いちばん変わったのは中間加速だった。高速道路の合流と、追い越しをかけるとき。B180の1.6リッターとは思えない加速になった。
カタログ値では +20PS / +50Nm。最高出力の数字としては控えめだが、街中や高速の速度域で体感に効いてくるのはトルクのほうだ。踏んでから前に出るまでの間が、はっきり短くなった。
ただしこれは体感であって、計測した数字ではない。同じ製品を同じ車に付けても、個体差や乗り方で感じ方は変わる。燃費については意識して測っていないので、何も言えない。
まとめ:RaceChipを個人輸入して分かったこと
総額は54,307円だった。日本の正価が公表されていない以上、「いくら得したか」は言えない。言えるのは、本国から買うといくらかかるのかという基準線が一本引けたことだけだ。
そのうえで、輸入の損得を決めるのは為替だけではないと分かった。VATの免除、日本の流通マージン、クーポン、そしてカードの海外事務手数料。
特に最後のひとつは見落としやすい。三井住友カードの海外事務処理手数料は、2024年11月に2.20%から3.63%へ引き上げられている。今回の取引で言えば1,759円。同じ買い物を2024年10月にしていたら、693円安かった計算になる。
外貨で買い物をするなら、どのカードで払うかは商品選びと同じくらい効いてくる。金額の大小ではなく、知っているかどうかの差だ。
そして、いちばんの教訓は保証のほうだった。明細に載っている項目が、自分に適用されるとは限らない。条件は必ず読む。安く買えたかどうかより、そちらのほうが高くついた可能性がある。
関税の計算方法、FedExから後日請求が来る仕組み、カード別の海外事務手数料の比較。このあたりは、それぞれ単独で書く価値があるので別記事で扱う。
この記事を書いた人
Tk@身体資産FP|メンテ中の独立系FP
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
50代の独立系FP。身体メンテナンスを「浪費」ではなく「将来コストを防ぐ投資」として実録中。医療脱毛・美容ガジェット・スキンケアを費用対効果で評価し続けています。
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